夢物語
杏奈
「青いなぁ空って」

俺はよく、真っ青な空を見て思う。
俺の生きてる意味って何だって。
人間が出来た意味って何だって。
なんで世の中ってあるんだ?
文明は出来なきゃならなかったのか?
なんで俺らって食って寝て成長しなきゃなんねぇんだって。
昔の人は海を進みすぎると果てがあって、そこにつくと谷ぞこに落ちると考えていたらしい。
しかし、今の俺たちは地球が丸いことを知っている。
だけど、宇宙の存在意義を知らない。
俺らの知らないどこかで、俺らの生まれた起源を知っていて、この世を操作してるやつがいるとしたら……
俺らの生死が意図的なら……
あいつを選んだ奴らを俺は許さないだろう。


俺には杏奈と言う彼女がいた。
一昨日天にたったんだ……
そんな実感も全く湧いてないし、あいつが俺の横に今すぐ来そうな……そんな気しかしないんだ。
会いたくてたまらないんだ……
ただ、現実を物語っているのは、昨日泣きすぎて腫れたまぶたと、今病院にいることだろう。
病院に来たのは何も自分の意思じゃない。
杏奈のお母さんが来てくれって電話をくれたんだ。
俺はふさぎこんでいたかったけど、大事な話があると言われると行くしかなくなる。
しばらく待っててくれと言われ、病室でスマホをいじって時間を潰していると、自然と杏奈を思い出して泣いてしまう。
情けなくて、どうしようもなくなる。

「待たせてしまってごめんねぇ」
杏奈のお母さんが来たのはそれから10分程後。
「いえ、大丈夫です」
俺は5分前には泣きやんでいた。
「玲音君大丈夫?酷いくまよ?」
「そういうお母さんこそ、顔色悪いですよ」
「あらやだ……」
から元気にも程がある。
杏奈のお母さんが1番辛いんだ……
「無理なさらずに……」
「そうね……」
重くなる空気。
俺には明るい話なんてとうていできない。
「話ってなんですか?」
「あぁ……そうね!あのね見て欲しい物があるのよ」
「物?」
杏奈のお母さんが取り出したのは一冊のノートだった。
「一人になる?」
「しばらく読みます……」
「そうね。終わったら武貞先生の部屋に来てね」
「はぃ。ありがとうございます」
杏奈のお母さんは病室を後にした。


12月14日
あと一週間。
これが私の残りの命。
私の闘病生活で、いつも隣で応援してくれた人に心から感謝したい。
恩返しも何もできないまま、死ぬなんて自分としてはほんとに嫌だ。
でも今ペンを持つのもしんどいくらいだから、私の命が減っているのはわかってる。
私の病気は治らない。
悪くなる一方だから、時間は一秒も無駄に出来ない。
だからこそたくさんのありがとうを言わせて欲しい。

玲音。お母さんよりも何よりも一番にありがとうって言いたいのは玲音です。
入院してからずっと隣で励ましてくれた私の大好きな人。
病気が怖くて泣いた時も、薬が辛くて泣いた時も、自分の無力さに泣いた時も……
すべての後に玲音がいた。
怖いなら怖くなくなるまでそばにいてくれた。
辛いなら辛くなくなるまで甘えさせてくれた。
無力な時は何も言わずに、抱きしめてくれた。
いつも優しくて大きかった。
その度に苦しさの倍の嬉し涙を流しました。
怖いから泣いてたんじゃない。
怖さから遠ざけてくれた優しさに涙が出たの。
辛いから泣いたんじゃない。
辛さを和らげてくれた言葉に涙が出たの。
無力で自分が許せなかったとき、受け止めてくれた玲音の大きさに、泣くしかできなかった。
ありがとうじゃ足りない玲音の思いに私はずっと甘えてた。
でも、そのおかげで病気にも立ち向かえた。くじけずに頑張れた。
大好きな玲音と一緒にいるために。
病気になって不幸だって思ってたけど、違うね。
一緒に闘ってくれる人がいるって幸せなんだね。
本当に今までずっとありがとう
玲音に出会えて本当に良かった
先に行くのはちょっと怖いけど、もう大丈夫。
玲音の事天国の人達に自慢するから♪

杏奈









「ずりぃよなぁ……杏奈」
俺だって嬉し涙流すのに……
ぬぐいきれない涙でいっぱいの俺のどこに大きさがあんだよ……
泣きながら久々に笑った。

この大空の上で杏奈が笑っていますように。
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