いつかあなたに還るまで




その日の夜、志保はベッドの上に並べたあるものをじっと見つめていた。
デザインはそれぞれ違うが、どちらも紺色の二枚のハンカチ。
一つは今日泣いてしまった時に隼人が貸してくれたもの。


そしてもう一つは____








ちょうど同じ頃、いつになく軽い足取りで自宅へと戻ってきた隼人がマンションの入り口に立っている人影に気付く。遠目ではっきりしなかったその相手が誰であるかを認識した途端、普通の人間ならば決して気付かないほど僅かに浮かべていた微笑みがたちまち消え去り、その代わりに眉間に深い皺が刻まれた。



「お帰りなさい。待ってたのよ」



だがそれに気付いても全く構うことなく、そこに立っていた女は一歩隼人の方へと近づいてきたのだった。

< 174 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop