いつかあなたに還るまで
あの男と初めて顔を合わせたのはいつのことだったか。
あと少しでランドセルを背負うほどに成長した頃、ある日突然見知らぬ男が自宅へと尋ねてきた。あの時の母の驚愕した顔は、20年以上が経った今でもはっきりと思い出せるほどに鮮明に焼き付いている。
激しく動揺し、混乱する母をよそに、その男はニッコリと微笑みながら、その様子をぽかんと眺めていた少年にこう言った。
『 はじめまして。君のお母さんのオトモダチだよ 』
と。
それからというもの、その男は忘れそうになるタイミングを狙ったかのように自分達の前に現れるようになった。来る度に両手に抱えきれないほどの手土産を抱えて。
その度に母は激しく拒絶していたが、何もわからない子どもにとっては友人が来ることの何がそんなに嫌なのかが全く理解できなかった。
その理由を尋ねたこともあったが、母は固く口を閉ざしたまま、決して何も言おうとはしなかった。