オレンジプラネット
「ま、でもお互い推薦で高校決まって良かっ たよな。今日のんびりできて」
「あたしは危うかったけど、千里は一般でも 余裕じゃん。見かけによらず勉強できるし」 「見かけどおり、だろ」

そう言って千里はボールを軽々とバスケット リングへゴールする。
まるでボールがリングへ吸い寄せられているみたいにキレイな弧を描きながら。こんなふうにボールを自分の分身のように簡単にシュートできる千里がちょっとだけ羨ましい。

「バレー部のくせに…」
「関係ないだろ、それは。それにおれの場合 センスがいいんだよ」

自信たっぷりにそう言って笑う千里へ「バカじゃん」とあきれたふりをするけれど、実際 それはあながち間違っているわけでもなく て、なんだか余計にくやしい。


「茜は電車通学だっけ?」
「そうだよー」
「ぜってぇ乗り過ごしそー。口あけて寝てさ」

からかうように笑う千里の頭を 「うっさい」と言って軽くたたいた。ふざけ合う声が、あたし達以外には誰もいない公園にやけに大きく響く。

「あーぁ、引越しめんどくさいなー」

そうすることに決めたのはおれだけどさ、 と言って千里はボールを空へ向かって思い切り投げた。というより投げつけたと言った方が近いかもしれない。

あたしは千里が引っ越すことを改めて思い知らされて、なんだか胸が苦しくなった。


地面でバウンドを繰り返すボールをただなんとなく見つめていると、千里のケータイが鳴った。

ケータイの外側にあるディスプレ イに表示される『喜多』の文字が視界に入って、ドキリと心臓がリズムを刻む。
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