今日も、私は、なく、【完】
そんな風に言わなくたって、あたしだって忘れてないし駄々をこねるつもりもない。
「……わかってるよ」
「さすが絢子、だから好きだ」
さらりとあたしの欲しいセリフを言ってのけた一宮さんに、きゅうっと心臓が痛くなる。
好き。あたしも好き。
一宮さんにとっての“好き”と、あたしの“好き”の重みはきっと違うけれど、それでも好き。そこも好き。
やがてしていつものホテルの駐車場に停まり、二人で同時に車を降りた。
――今日は最後の日だった。
あたしと一宮さんがこうやって汚いホテルで会う。
部屋に入って、いつものようにベッドにくつろいで寝転がる彼の隣に、あたしも真似てだらしなく座った。
不思議と冷静だった。一宮さんと抱き合う最後の日なのに。
「……一宮さん、今、幸せ?」
「ははは」
「ちゃんと答えてよ」
いつも、最初、普通に会話をする。