音楽が聴こえる
彼女は昔から、悟のことを『なかやん』と呼んでいる。


「わおっ可愛い……」

佐由美さんは、ステージの彼等を指差す。

「こーこーせーっ」

ようやくあたしの体から離れ、斉賀の少し切ない歌声に耳を傾けた。


「……いいね」

斉賀達の演奏が終わった後で、佐由美さんが呟く。

「うん。まだ、伸びしろ一杯あるからね」

あたしが笑うと佐由美さんは安堵の表情を浮かべた。

「最後に会った時、二度と関わりたくないって感じだったから……良かった」

「あたしもこんな風に関わるとは思わなかったし」

「なかやん、か」

またもや二人で笑い合う。

佐由美さんも悟の、こうと決めたら思いのまま行動する動物的性質を知っている。

『infinity』時代の仲間達も皆、その性格を苦笑しながらも受け入れていたのだ。

かけがえのない仲間達。


「……ダイちゃん、元気?」

「元気かな? ……多分」
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