音楽が聴こえる
「……へぇ。佐由美が俺のこと口にしたりするんだ」

佐由美さんがろくに言葉も交わしていない、と言ってたのを思い出した。

「マアコ早く行こう。ファミレスに車、置いて来たままだし」

相変わらずマイペースなシュウに溜息が漏れる。

「勝手過ぎでしょ」

「……そんなの百も承知。俺がマアの前に顔を出す時点で勝手なのは分かってる。…………それでも会いたかったんだから…仕方ないじゃん」


プライド高いシュウの言葉とは思えなくて、彼の顔を凝視した。

それでもサングラス越しでは、彼の表情は見えなくて。


……それだけ弱ってる、とか?


それ以上何も言えなくなったあたしは口を閉ざした。

この時、既にあたしの頭の中には、斉賀達のことも悟のこともすっぽり抜け落ちていた。

ただ前を歩くシュウの思いがけない台詞に驚き、 彼に腕を引かれるままライヴハウスを後にした。



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