音楽が聴こえる
線はまだ細めかもしれないけど、充分ビジュアル的にもイケてる子。

これなら女子も放っておかない。


でも、何であたし?

こいつ、あたしを地味先って呼んだくせに。

生徒達がその蔑称で呼んでることくらい、あたしだって気付いてる。


……絶対、あいつだ。

悟の奴が何か、入れ知恵したに違いない。


「……何だよ、先生。人の顔ジロジロ見んなよ」

ばっちりと斉賀と目が合った。

おっと、失礼。つい凝視してしまったよ。

あたしは咳払いをして、最もらしい断る口実を探す。

「私の授業中に顔を上げてるのを殆ど見たこと無い君が、私に何か頼むのもどうかと」

斉賀は自分の髪をクシャクシャと掻いて頭を抱えた。

「仕方ねーだろ、俺じゃんけんに負けたんだからっ。あー俺こういうの下手なんだよ、誰かを説得するとか、柄じゃねーし」

ブツブツとあたしに文句を言ってどうする。

「君の言ってることは分ったけれどね。君達、受験クラスでしょう? 私が引き受けたりしたら、担任の先生方に何を言われるか」

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