音楽が聴こえる
「別に、あいつら何も悪いことなんてしてねーだろ。好きな音楽聴いて、跳ねてるだけだろうが」

あたしは眼鏡のフレームを指でクイッと押し上げた。

「うーん、そうね。飲酒に喫煙、深夜徘徊。子供は制約が多いからねー」

「クソ喰らえだ、そんなモン!!」

「それがルールってもんよ、君」

「そんなの、大人が勝手に決めたルールじゃねーか」

童顔君は顔に似合わない馬鹿力で、あたしを椅子から引き摺り降ろそうと、両方の二の腕をギュッと掴む。


「アホかっ。その手を放せっつんだよ!!」

低く威嚇するような声の主は、横から手を伸ばし、あたしと彼の間に立ちはだかった。



「悠太。お前、何、教師に喧嘩売ってんだよ。もう高校卒業したんじゃねーのか?」

「悟(さとる)さんまで。俺、二十歳過ぎましたよっ」

悠太と呼ばれた青年は、薄暗い中でも分かるほど真っ赤になった。
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