音楽が聴こえる
淡々と授業をする姿が、超真面目そうで超クール過ぎて、陰じゃ『地味先』なんて呼ばれてる女。

他の女教師の奴らと違って、媚びも売らなきゃ色気も売らない。

奇特な女。


でも、今はあれ。

香田の奴、悟さんと話しなんてしてる。


まさか俺達を出してくれてる、悟さんに対して失礼なことを言ってんじゃないよな?

悟さんが、ここいら辺のバンドマンからは一目置かれている存在だなんて、香田が知る訳無いだろうし。

悟さんは見た目も中味も大人の男で、男女問わず憧れの存在なんだぜ?

次が俺達の番じゃなければ、あそこに行きてぇ。

どう考えたって話し、噛み合わないだろう?


俺が悶々としていると、何かがドンと背中に突き刺さる。

「……痛てっ、何だよ、謙二」

謙二の奴、ベースのヘッドで俺のこと突きやがった。

「ジュン、円陣。忘れてる」

俺は慌てて左手を出して、すでに重ねられてる仲間達の手の、一番上に重ねた。

「 SPLASH GO!!」

出番直前にいつもやる、俺達の成功のおまじない。こんなジンクスみたいな大切ヤツを忘れるなんて有り得ねぇ。
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