音楽が聴こえる
朝の悟は恐ろしいほどテンションが低い。

顔を会わせた時に交わした高城達の挨拶にも、彼はかったるそうに煙草を吸うだけだった。

悟が『ああ』とか『おう』以外の言葉を発しないものだから、皆が不安そうな面持ちであたしを見る。

朝はこんなもんなので気にするな、とあたしが説明するのも何だかだし。

仕方無く「良いから始めちゃって」とだけ高城に声を掛けた。



立て続けに四本目の煙草へ火を付けた悟に「煙い」と文句を言ったら、スッと反対隣りの床を指差された。

どうやら椅子に座るなということらしい。

あたしは私服の中でも最も地味なTシャツと黒いGパンという気の抜けた格好だから、汚れても問題無いと判断したのだろうけど。

全然目の覚めていない悟の隣りに座り直し、斉賀の歌声を彼等の奏でる音を聴いた。

そのうち、いつの間にか自分が口ずさんでいたことに気が付いて、悟をチラリと見やると。

悟は、あたしを見詰めていた。
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