音楽が聴こえる
俺が歌い始めても、悟さんは煙草を吸ってるだけだし、香田は椅子に座ったまま足をブラブラさせているだけ。


……なんつーか。気になった。

暫くして、香田は椅子から降りると悟さんの隣りに腰を下ろしたけど。

その二人の距離は、自然な程近い。


香田が何かを言うと不機嫌なままの悟さんが答える。

香田はそれを気にしてない。……そう、全然だ。

俺達がビビる様なあの雰囲気を何とも思っていねーんだ。

終いには悟さんの口元に笑みらしいもんまで見えて。


ミスを重ねる山路以上に集中出来ない俺は、歌うのを止めた。




「山路よー、お前もう少しミスらねーで弾いてくれよ」

俺のストレートな言葉に、山路はグッと喉を詰まらせた。

「わ、悪かったなッ。下手くそでよっ」

「そんなこと言ってんじゃねーよっ。俺が言いたいのは前よりお前の腕がブレブレになってんじゃんてことだよ」

間に斗夢が入って来て、まあまあ、と俺ら二人を宥めようとする。



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