甘いヒミツは恋の罠
「あ……」


 テレビカメラが一瞬回ったその時だった。陳列されたアクセサリーの並びの向こうにすらっと背の高くて、ひときわ目立つ人影を見た気がした。


「朝比奈……さん?」


 もう一度映らないか期待して紅美はベッドから起き上がり、食い入るようにテレビの前に座り込んだ。


「以上、“キラメキ”から中継お伝えしましたー!」


 虚しくも、キンキン声のレポーターの姿が映ったかと思うと、番組は別のコーナーへと切り替わってしまった。


(今の、朝比奈さん……だったよね?)


 朝比奈のことを考えると、昨夜の光景が蘇る。あんなに自分のことを冷たい目で見下ろされたのは初めてだった。それに知らされた朝比奈の思惑――。


(あ~もう! 余計なこと考えるのはやめやめ!)


 カーテンを勢いよく開けると、外はカラッと晴れ渡っていた。史上最悪なクリスマスの翌日が澄み切った晴れとは皮肉もいいところだ。


(そうだ! 私も視察に行ってみよう)


 特に予定もなく、家でごろごろしていてもまた余計なことを考えかねない。紅美はそう思い立つと、シャワールームに向かった。
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