他人と身内と
止めて

仮面野郎

「早く加戦しないと....!」


第4地点に急いで向かい、ビルからビルへと飛び回る。


しかし、あともう少しで着くという時に嫌な邪魔が入った。


「おい、待て!!!SKだろっ!」


ビルの真下から聞こえる、少し取り乱した声。


一般市民?


もしくは新人SK対処部隊?


足を止め、下の奴に声をかける。


「誰だ。」


殺気を放つが、あくまでも冷静に対応する。


相手も少し取り乱してはいるが、冷静に対応してくる。


「相手が誰かも知らねぇのに手の内を明かすか。」


下の奴はえらく上からものを言ってくる。


一般市民じゃなさそうだ。


じゃあ、新人の野郎か。


つい、イライラして言い返す。


「私はお前が誰かと聞いている。答えろ。」


新人の顔を見ようとするが、暗くてよく見えない。


目を凝らしていると、月が雲から離れ、下の奴の顔を照らし始めた。


「........!?」


月明かりにさらされた顔に"負け"を確信した。


「お前は.....」


激しい敗北感に襲われた。


なぜなら、そこにいたのは、SK対処部隊本部の中で全てにおいて、最も優れていると言われている男。


"仮面野郎"


どうして、こんなところに....。


どうする....。


戦うか.....。


いや、一人で戦うのはあまりにも危険すぎる。


かといって、逃げても追いつかれて、背中を斬られるだろう。



「お前に名前を名乗る義務はない。そっちが名乗れ。SK。」


仮面野郎は静かに、でも怒りが交じっていることが伝わってくる。


にしても、だいぶ印象と違った。


もっと冷静で何事にも臨機応変に仕事をこなす奴だと思っていた。


こんなとこで足を止めるなんて.....。


後から来たのなら、SK全員を後ろから斬ればいい。


話しかけるなんて馬鹿がする行為だ。


「名乗れと言われて名乗る馬鹿がどこにいる。馬鹿か。」


とりあえず、挑発をして相手の五感を探る。


「.......俺が名乗ったら名乗るか?」


「いいよ。」


え?ちょっと待って。


簡単に手の内を明かすの?


......仮面野郎って本当に馬鹿なの?


いや、挑発だ。


偽名を名乗ってくるに間違いない。


「分かった。俺が名乗るから名乗れよ。」


仮面野郎はスッとビルをかけ登り、私と同じ地に着く。


「絶対だな?」


あれ?


さっきまで下にいたから、あんまり聞こえてなかったけど、この声、聞き覚えがある。


どこで聞いたっけ.....。


なんだか懐かしい声。


この声.........。


仮面野郎は仮面に手をかざし、その素顔をさらした。


「俺は神埼 護。」
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