他人と身内と

挑発

「はぁ、はぁ。」


無我夢中で飛んだため息切れが激しい。


口の中は血のような味がする。


「.......っつ......ぅ....」


涙がこぼれ、情けない声が出る。


身内が敵ってこんなにも辛いんだ。


護なんて殺せないよ.....!


さっき戦うって決めたばかりなのに揺らいでちゃダメ.....!


仮面野郎は敵。


護も敵。


「敵.......敵........敵......」


落ち着け........落ち着け。


決断したじゃない。


私たちのために戦うって。


自分でそう決めたじゃない。


護は敵.......。



SK対処部隊長には身内がいるかもしれない。


そんなことは覚悟していた。


「身内だろうが他人だろうが仲間が殺人を選んだら殺す。」


そうだよ。


"一人はみんなにためにみんなは一人のために"


戦わなくちゃ。


両親の気持ちは分からなくても先祖の言葉がある。


再び決断が固まった。


勢いよく立ち上がり、第4地点に急いで向かう。


着いたときには血が飛び散り、第4地点はもう終盤戦にさしかかろうといしていた。


「喜々、来たか。考えはまとまったのか?」


斬り倒しながらも空海さんは心配そうに言う。


「はい!もう大丈夫です。戦えます。」


空海さんはニコッと笑い、先頭に立つ。


「終盤戦だ。.....行くぞ!」


三人は空海さんの後ろに続き、SK対処部隊を斬り倒していった。


血が飛び散り、パーカーもバンダナも刃も赤く染まる。


加戦してから30分が過ぎた。


「喜々、そろそろ退く。頼んだ。」


空海さんが終わりの合図をだし、ビルの屋上へかけのぼる。


「SK対処部隊のみなさーん!
今日もお勤めご苦労様でーす!
一人も殺せてないですよ?
大人数で情けない。」


いつもと違う終わり方をやった。


いつもなら、こんな蔑むような言い方はしない。


空海さんも優喜も杏も少し驚いた顔をしている。


バンダナをしていても伝わるくらいに。


「私たちSKは強い。
次からもっと息の切れる戦いを期待しております。
では、今日の戦争はここで終了させていただきます!
今宵の月をご覧あれ...」


その言葉を最後にSKは後ろを向き、SK本部へ遠回りをして帰る。


今日の終わり方には意図があった。


護への挑発。


遠回しだが、


「一番腕の立つ奴を出せ」


という意味だ。


「喜々、今日の終わり方はどういうことだ。」


空海さんもそのことに気がついたようだ。


「帰ったら説明します。今日、いい情報を入手しました。」


四人は素早い動きで本部に帰っていった。
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