何度でもキミに初恋を
実行委員の会議が終わって靴箱に向かっていると、篤史くんに会った。


剣人が教室に来なくなったせいで、最近は篤史くんに会ってなかったな。



『あっ、すずちゃん、今帰り?』

篤史くんは人懐こい笑顔を浮かべて近づいてくる。


『うん、こんな遅くまで篤史くん、何してたの?』

『担任に呼び出されて説教。中間試験、赤点ばっかだったから』

篤史くんは、組んだ両手を、うーんと言いながら上に伸ばすと、少し言いにくそうに、


『あのさ…』

と口を開いた。


『うん?』

『最近、剣人、変じゃない?』

『…!!』

私は思わず立ち止まって、篤史くんを見つめる。


『篤史くんも…そう、思う?』

『そりゃあね。なんかあったの?』

『……』

私は俯いて答える。

『なにも…』

ない、と思う…。


『そっか。』


私は俯いたまま、篤史くんと並んで歩く。


『すずちゃんとけんかでもしたかな、って思ってたんだけど…』


けんかなら…

けんかなら、ごめんねって言って仲直りもできるけど、
私たちはけんかすらもしてない。


だから、
仲直りも出来ない…。
< 91 / 143 >

この作品をシェア

pagetop