それでもキミをあきらめない



「え、なにそれ、自爆テロ的な?」


わたしの心の流れをいまいち飲み込めていない様子の兄は、それでも

『復讐』に前向きになった妹を応援してくれるらしい。


「あ、アイライナーはもっとまつ毛の際に入れるんだよ」


わたしの覚束ない手つきを見かねて、キリカさんから盗んだメイクのポイントを伝授してくれる。

起き抜けでぼうっとしていた冴えないわたしが、明るくハツラツとした少女に変わっていく。


未だに信じられなくて、鏡の中の自分につい見とれてしまった。

自分の貧相な顔が映るのが嫌で、鏡なんて大嫌いだったのに。


今洗面所の鏡が映しだしているのは、

はじめてこの世界に降り立ったかのように驚きに目を見開いている、華やかな女の子だ。


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