初恋の絵本
河川敷を歩く。
そうしてると。
「ずっとハルで、いたかった。でも、俺のこと知って欲しいとも思ってた」
「どうして?あなたはあなたでしょ?なんでハルでいたいの?」
そうすると悲しそうに笑った。
「晴川の真似なんかして。バレると思わなかったのか?」
「思ってたよ。いつ叱られるかドキドキしてた」
「お前、似せる気なかったもんな」
「え?似てなかった?」
「似てない」
「ええー。せっかく金髪にしたのに」
「騙されるのは心実くらいだろ」
「似てたよ。顔同じだし」
「……全然違う。顔は似てるけど、雰囲気や仕草なんて別人だ」
川の向こうに、彰吾の家のビルが見てた。
「心実に、会いたいって思った。でも俺は似てたから」
「似てた?」
「ハルに」
もう分かる。
ハルならそんな顔はしない。
そんな、哀しそうな。
自信のない表情。
「そのままね。声をかけずに終わるはずだった。でも……ハルになっても心実と話してみたかった」
「そんなことで、同じ髪型にしたのかよ」
「楽しかったよ。金髪にしたの初めてだったし。ハルみたいで」
「今すぐ黒髪に戻してこい。似合ってねえぞ」
「でも、ハルは似合ってる」
「お前とハルは別人だ」
「……そうだね」
多分。
彰吾はいい意味で言ったのに。
晴太の声は哀しそうだった。