初恋の絵本
真実、答え、正解、








何もない部屋に通された。


ほんとに何にもない。






「晴太のものはどこにあるの?」

「前の住んでた家」



アパートの一階のとある一室。





なんでも話すっと言った晴太に、
聞きたいことが多すぎて。

なにから聞けばいいか
わけ分かんない。




「ここは、父さんの事務所兼別宅なんだ。ここに住めって父さんが。一人はダメだって」

「一人?」

「一人。俺は、一人だから」

「私も、一人だよ」

「………そうだね、僕らは一人」




二人で小さな窓から見える
夕焼けを眺めていた。





「初めて俺らがあった時、覚えてる?」

「覚えてるよ」




お母さんのお葬式。

泣いてる私に。

あなたは声をかけてくれた。





あの時のハルは、あなたなんだよね?

晴太。




「ハル」

「うん。そうだよ、心実」

「私の、ハルは……あなただった」

「……うん」





この部屋に来てから、
やっと晴太と目が合った。



この部屋に来た理由。



知りたい。

でも、知りたくない。

でも、知りたい。





いい出したいけど、
言い出せない。




そんな勇気、私にはなかった。




けど、始まらない。





言わないと。

言わないと。

言わないと。






「……晴太って、ハルのなに?……晴太って私のなに?…」







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