初恋の絵本
家族…王国??


今日も彰吾と一緒に夕飯を食べた。


紅茶を入れてくれる彰吾の背中
に呟いた。

「そう言えばさあ」

「ああ?」

「ハルから、誘われた。試合、見に来てって」

「………」

「なんか、毎日見に行ってたのバレてた」



彰吾がなにも言わないから、
私とテレビだけが喋っている。

流れるニュースは難しい政治のこと。



「なんで私だったのかな?他にも毎日見に来てる人いるのに」

「………」

「おかしいことしてたのかな?
黙って見てたのがいけなかった?
他の子みたいに応援とかしなかったから?ねえ、なんでだと思う?」

「知らなえよ!」



ガチャンと乱暴に食器が置かれた。

小さなテーブルが、
彰吾の振動で揺れる。



「俺は試合なんか見たことねえし、女友達に聞けばいいだろ?」

「友達には言えない。恥ずかしい」

「はあ?俺はお前のなんなんだよ」

「家族、かな」



なんだろう。

彰吾にならなんでも言える。

怒鳴られても無視されても平気。

安心する。



だけどハルは逆。



「家族って……」

「うん。だって、家族の誰よりも多く会話してるもん…」



ろくに会ったことのないお父さん。

私が幼くして亡くなったお母さん。

最初は淋しかったけど、
もう慣れた。

だって、彰吾がいてくれたから。



「……知ってる。それならここに住めばいい」



ボソッと。

だけど真剣な顔で、彰吾が呟いた。






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