初恋の絵本
本カノと偽カノ


「すごい噂になってるな」



なにが?

と聞きたかったけれど、
私の口の中は頬張ったハンバーガーで
いっぱいだった。



「?」

「ハルとお前のことだよ」

不思議そうな顔をしていたら、
察したのか彰吾が答えてくれた。

シェイクでハンバーガーを流し込んで、
ごっくんと飲み干す。



「ああ」

「付き合ってるんだって?」

今日の彰吾は表情はない。

上機嫌なのか不機嫌なのかさえ
判別できない。

「付き合ってないよ。みんなが勝手に言ってるだけだよ」

「そうか」

「これから付き合う気は?」

「付き合うって?」

「ハルと」

氷みたいに冷たくて固い言葉が
投げられた。

真っ直ぐに私を見つめる
彰吾の瞳は真剣で。

気軽に答えられない質問だと感じた。

「ええと」

ハンバーガーをお皿に置いて、
ちゃんと話そうと思った時、
玄関のチャイムが鳴った。


「あ。はーい」

「待て!」

待てと言われても、もう遅い。

彰吾の座っていた位置より、
私の方が玄関から近かった。


「はーい」

なにも考えず、ドアを開ける。

ここを訪れるのは、
彰吾の身内しかしないはず。

それか、下にいる組の人かと
勝手に思い込んでいた。

「……………」

予想を裏切って、
玄関には知らない女性が立っていた。

私を見て固まっている女性は、
そこまでしなくてもキレイなのに
と思わせるくらい
メイクの派手な人だった。



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