赤い流れ星3
その時、玄関のチャイムの音が軽やかに響いた。



「あ、俺が出るよ。」

なんとなくその場に居辛かったこともあり、俺はそう言い残し玄関に向かった。
この時間を考えれば、おそらく、訪問者は野々村さんか高見沢大輔だ。
どちらにせよ、簡単に挨拶だけしてすぐに居間に通せば良い。



「あ……こ、こんばんは!」

「……え?」



扉を開いた先にいたのは、白いロングコートをまとった見知らぬ女性。
品が良く…なのに、大人の色気が漂うスレンダーな美人だ。
俺は俄かに顔が熱くなり、ひさしぶりに心がときめくのを感じた。
女性は驚いたような声で一言発したっきり、俯いたまま顔を上げない。
何も驚くようなことはない筈だが、どうしたんだろう?
そんなことを考えるうちに、目に映ったやけに落ち付かない彼女の動作……
それに、俺は見覚えがあった。



(……まさか!)



「え…っと。
あの……もしかして、野々村…さん?」

「は、はい!
本日はお招きどうもありがとうございました。」

「え……ほ、本当に野々村さん?」

「は、はい。」



間違いない。
この口調やこの声は、確かに野々村さんのものだ。
でも…姿が違う。
顔も髪型も着ているものも、いつもの野々村さんとはまるで違う。



(あ……)

俺はその時不意に思い出した。
そうだ…野々村さんも、俺達と同じく、高見沢大輔の店で髪をいじってもらったんだ。
そういえば、美幸が言っていた。
野々村さんはすごく変わったと…
だけど、ここまで変わってるなんて俺は想像してなくて……
変わったどころか、これじゃあ別人じゃないか。




「野々村さん…すごく変わられたから、わかりませんでした。」

「す、すみません。」

「なにもあなたが謝ることじゃない。
それに……変わったっていうのは……あまりに、きれ……」



「わぁ!野々村さん!
今日はすっごく綺麗だね!」



俺が思わず素直な感想を口にしかけた時、ちょうど美幸が現れて俺の声をかき消した。



「美幸、早く入ってもらえ。」

そのことが急に恥ずかしくなった俺は、その場から逃げるように居間へ戻った。
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