赤い流れ星3
side 野々村美咲




(ど、どういうこと……!?
青木さんは、なぜあんなことを……)



信じられない想いだった。
まさか本気じゃないと思うけど、青木さんがあんなことをおっしゃるなんて……



「それは残念だなぁ…
野々村さんに好きな方がいらっしゃらないなら、俺が立候補しようかと思ってたのに……」



さっきの青木さんの言葉が、頭の中をぐるぐる回る。



「美幸、タカミーにコーヒーをいれてやってくれ。
出来るだけ濃いやつをな…!」

タカミーさんがトイレに立たれた時、青木さんが小声でそう言われた。



「あ、美幸…わしも頼む。」

「うん。わかった。」

「あ、私もお手伝いします。」



私も美幸さんと一緒に台所へ向かった。
青木さんの言葉がなかなか頭から離れなくて、なんだかとても恥ずかしくてその場に居辛かったから…



「ねぇ、タカミーってこの前とすごく雰囲気が違うと思わない?
あっち系の人だってことは聞いてたけど、この前はあれほど女言葉じゃなかったよね。」

やかんを火にかけ、私達は台所の椅子に腰掛けた。



「多分、お店では先生って立場もおありでしょうし、今日はお酒も飲まれてるからじゃないですか?」

「あぁ…なるほどね。
でもさ、タカミーが兄さんのこと好きだって…あれ、本気なのかな?」

「さ、さぁ……どうでしょう?」

「もしタカミーが本気だったとしても、兄さんはその気はないんだよ?
あんなに女好きなんだから。
でも、それが急に変わったりするってことなんてあるのかな?
男に目覚めるなんてことが……」

「さ、さぁ…?」



そんなこと、多分、ないとは思うけど……
でも、絶対にないとも言えない。
タカミーさんと青木さんの並ばれた様子は、若い女の子がキャーキャー言いそうなちょっとあやしい雰囲気に見えないこともない。
なんせ二人共美形だし、体格も良くて、BLのキャラクターとしてはぴったりで……



(不思議だわ…青木さんが女の人と仲良くされてるのを見ると辛いのに、タカミーさんとだとなんだかほほえましくさえ思える…
……あ、そういえば……)



「あ、あの…美幸さん…」

「何?」

「あの……そ、そういえば…今日は青木さんの彼女さんが来られるってお話だったのでは?」

「あぁ、あれ…なんだか仕事で来られなくなったんだって。」

「そうだったんですか……」



やっぱり聞かなきゃ良かった…こんなこと。
聞いた途端に、私はなんだか急に気が滅入るのを感じた。
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