赤い流れ星3
side 和彦




(なんだ?二人で、一体、何の話をしているんだ?)



美幸と野々村さんは、二人で少し離れた場所に座りこみ、さっきからなにかひそひそと話をしている。
それがなんだか妙に気にかかる。



「ねぇ、カズ…
カズのお部屋見せてよ。」

「え…?あ、それはだめ。
トップシークレットなんだ。」

「まぁ、意地悪ね!」

「そんなんじゃないよ。
俺の癖みたいなもんだな。
部屋は俺だけの場所っていうか……誰にも邪魔されたくない場所なんだ。
な、アッシュやマイケルも入ったことないよな?」

「うん、それは本当だよ。」

「ええー……そうなの…
つまんない……」

アッシュが答え、それに対してマイケルも頷いたのを見て、高見沢大輔は渋々諦めたようだった。



「マイケル……トイレはこっちじゃったな?」

「うん、そこをまっすぐ行った突き当り。」



「じゃ、カズの部屋に入った女の子はいないの?」

「もちろん。
部屋どころか、この家にだっていない。」

「えっ!?まさか~……」

高見沢大輔は、俺の顔を訝しげな視線でみつめた。



「本当だよ。
ボク達も女の子をここに連れて来たことないし、カズも女の子と会うのはいつも外だから。」

「嘘~~信じられない!
え……じゃあ、私が最初ってこと!?
……あ……違うわ!野々村さんがいるじゃない!」

にこやかに微笑んだ高見沢大輔の顔が、その次の瞬間、強張ったものに変わった。



「だって、野々村さんは職場の仲間だし…仲間っていうか、ファミリーみたいな感じだからね。
最近、野々村さんは美幸ちゃんと仲良くしてるからなおさらだよ。」

「本当~?
でも、カズ、言ってたじゃない。
野々村さんに好きな人がいなかったら、立候補したいだとかなんだとか…
それに、なんだかうっとりしたみたいな目で野々村さんのこと見てたじゃない!」

マイケルが説明してくれたにも関わらず、高見沢大輔は責めるような口調で俺に詰め寄り、腕を力一杯つねった。
コーヒー一杯程度ではまだ酔いは冷めていないようだ。



「タカミー、あんなのカズの冗談に決まってるじゃない。」

「いや……あの野々村さんなら、カズも手を出すかもしれないよ~…」

アッシュがまたそんなつまらない冗談を言う。

「馬鹿言うなよ…野々村さんはファミリーなんだろ。
家族に手を出すなんて、俺はそんな鬼畜じゃないよ。
それに……野々村さんには好きな人が……」

ふと口にしたその言葉に、俺はやけに気が滅入るのを感じた。
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