赤い流れ星3
side シュウ




(……どうかしてる…)



俺は、なにをやってるんだ?
プライベートな名刺まで渡してしまうなんて……まともじゃない。



「シュウさん、さっきの子、誰なんですか?」

「……俺もよくは知らない。」

「え……!?
だったら、なんで…?」

良太が、驚いた顔をしてミラー越しに俺をみつめた。
それも当然だ。
あいつは…俺が気にするような相手じゃない。
そりゃあ、今日はこの前に比べたらマシだった。
努力してるのはわかるけど、俺が今まで付き合って来た女とはレベルが違う。
しかも、アニメが大好きなオタクだぞ。
良太じゃなくったって、不思議に思うさ。



「大河内さんと親しいからな。」

「あぁ……」

良太は納得したように、大きく頷いた。



そうだよな…
俺がわざわざ店を抜け出して送って行くなんて、余程の理由がなければあり得ない。
大河内さんは、店の入ってるビルのオーナーだし、大切な人だ。
その人と親しいからということ以外に、俺がこんなことをする理由はない。



だが……
それとは違うことは自分でもわかっていた。
そんなことは、誰かに頼めば良いことだ。
良太だけに送らせても良いし、ハイヤーを呼んでも良い。
なのに、俺はどうしてここまで着いて来た?
しかも、名刺まで渡すなんて……



(畜生……!)



自分で自分の気持ちがわからない。
こんな事、滅多にないのに……


全く、あいつに関わるとろくなことがない。



「良太!
まっすぐ帰らず、ちょっとそのへんを走ってくれ。
そうだな。
どこか夜景の綺麗な場所にでもやってくれ。」

「え…?
良いんですか?」

「あぁ、少しくらい構わない。
……今夜はちょっと、ややこしい客がいるからな。」



咄嗟に口にした言い訳と同時に、高見沢大輔の顔が思い浮かんだ。
そうだ、俺は高見沢大輔から逃れるために、こんなことをしたんだ。
彼も大河内さんの知りあいだからそう無下には出来なくて、そのストレスで俺はこんなことをしてしまったんだ。



(きっと、そうだ……)

良太に気付かれないように、俺は小さく頷いた。


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