赤い流れ星3
side 野々村美咲




「野々村さ~ん!お待たせ~!」

大きな声で私の名を呼ぶ美幸さんの顔には、こぼれんばかりの晴れやかな微笑み。
一目で、なにか嬉しいことがあったんだと予想がついた。



「ごめんねぇ…急に呼び出してばっかりで。」

「いいえ。私はいつでも大歓迎ですよ。
でも……相談事って……何かあったんですか?」

「それは……中でゆっくり話すよ。」



美幸さんに背中を押されるようにして、私達はいつものファミレスに足を踏み入れた。



「何にしよっかなぁ?」

注文する品を選ぶ間も、美幸さんはずっとご機嫌な様子で……




相談したいことがあるから会いたいというメールが届いて、どんな問題があったんだろうと心配して私は駆けつけたのだけれど、当の美幸さんはいつも以上にご機嫌で、なにか狐につままれたようなおかしな気分だった。




「美幸さん…あの…相談事って……」

「う、うん……料理が来たら、食べながら話すよ。」



美幸さんは少し照れたような素振りで、そう答えられた。
一体、何なんだろう?
昨夜はこれといったことはなかったし……あ、でも、メールはあったけど、夜中に美幸さんからメールがあるのはいつものことだし……



「そういえば……」
「そういえば……」



昨夜のメールのことをお聞きしようとした時、奇しくも私の言葉と美幸さんの言葉が重なった。



「あははは……」

ただそれだけのことなのに、美幸さんはとても面白そうに笑われて……



「な、なんですか?美幸さんの方からどうぞ。」

「あ…そんなたいしたことじゃないんだけどね。
昨夜、兄さんに文句言われないために早く帰ったじゃない?
なのにね、帰ったら誰もいないんだよ。
三人でガールズバー?みたいな所に行ったんだって。
早く帰って損したよ。」

「そうでしたか……」

「しかも、アッシュさんとマイケルさんは帰ってきたんだけど、兄さんはお泊まりだよ。
お店で知り合った女の子とどこかに行ったんだって。
仕事にはちゃんと来てたけど、兄さんも良い年なのに……本当に参るよ。
マイケルさん達も『仕事の息抜きだと思ってあげて』な~んて言うんだよ。
全く、どうかしてるよね。」

「そ、そうなんですか……」

あまり聞きたくない話だった。
美幸さんは、もう慣れたと言わんばかりの表情だったけど、私はやはりどこか苦しくて……



「きっとあの分じゃ、例のアンリさんも遊びだね。
あ~あ、誰かしっかりした人と落ちついてくれないかな。
……それとも、ああいうタイプはたとえ結婚したって浮気癖は治らないのかな?」

「さ、さぁ……?」

私は気のない返事をして、本心を誤魔化した。
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