赤い流れ星3




「こんな遅くに申し訳ありません。」

「いえ…な、なにかあったんですか?」

非常識なのは承知の上だ。
だが、俺はどうしても明日まで我慢することが出来なかった。



「実は、どうしてもお話したいことがありまして…」

深夜だというのに、野々村さんは俺達を快く家にあげてくれた。



「本当にすみません。
それと、これからお話することは本当に突拍子もないことで…
もしかしたら、俺の頭がおかしくなってるのかもしれません。
ですが、真面目な話なんです。
どうか、聞いて下さい。」

「は、はい。」

緊張で口の中がカラカラだ。
でも、ここまで来たんだ。
話さなければならない。
俺は意を決し、口を開いた。



「野々村さん…美幸は…美幸はシュウと小説の世界に行った…」

「えっ…」

野々村さんの驚きは尋常なものではなかった。
顔は真っ青になっていたし、指先も震えていた。
だけど、その驚きの意味はわからなかった。
俺がおかしなことを言うから、驚いているのか?



「青木さん、どうしてそのことを…」

「えっ?」

思いがけない野々村さんの言葉に、俺の背中には冷たい汗が流れた。



「そ、それでは…野々村さんはそのことをご存じなんですか?」

野々村さんは怯えた目をして、小さく頷いた。



「そ、それじゃあ、本当に美幸とシュウは小説の世界にいて…」

「そうです。
そして、私が美幸さんの物語の続きを書きました。」

「うっ…」

俺は胸がいっぱいになって、こみあげる涙を懸命に堪えた。



間違いじゃなかった…
本当だった…
俺が思い出したことは、本当のことだったんだ。
今まで抱えていた大きな不安が、急に消えて行くのを感じた。



「ありがとう、野々村さん…」

俺は思わず野々村さんの両手を握りしめていた。



「でも、どうして、急に…」

「あぁ、実は、俺…
シュウのことをネイサンに預けることにしてたんです。
それで、ネイサンが迎えに来てくれて…
でも、その時にはすでに二人は小説の世界に旅立った後だった。
俺は、ネイサンにすべてをぶちまけました。
一人で抱えてられなかったんです。
その後、すぐにネイサンはイギリスに帰り…俺はなぜだかそのことをすべて忘れてた…」

「そうだったんですか…
あ、青木さん…KEN-Gさんに連絡して良いですか?
出来ればKEN-Gさんにも来ていただいて…」

「野々村さん…大河内さんには何も関係ないじゃないですか。
どうして、大河内さんなんか…」

がっかりした…
やはり野々村さんは俺のことを頭がおかしいと思っているのか?
だから、大河内さんを…
だが、野々村さんは思いがけないことを口にした。



「青木さん…KEN-Gさんは賢者さんなんです。」

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