赤い流れ星3
「野々村さん、今日は美幸のためにわざわざ来て下さってどうもありがとうございます。
……美幸…野々村さんにご挨拶はしたのか?」

「したよ。
兄さんが帰って来るまで、野々村さんとずっとおしゃべりしてたんだよ。」

「……そうか。
野々村さん、驚かれたでしょう?
24にもなって、アニメとゲームにしか興味がない困ったやつですが、これからこちらで暮らしますのでどうぞよろしくお願いしますね。」

「こ、こちらこそ…!」

「とにかく、乾杯しようよ。
しゃべってたら、せっかくのビールが温くなっちゃうよ。
さて、と…では、皆さん、美幸ちゃんがここに来てくれたことを祝って…乾杯!」

本来なら、青木さんが言う筈のことをアッシュさんが言って、私達はグラスを合わせた。



うかつにも、私はその時になってようやく美幸さんがここに住むということに気が付いた。
よく考えてみれば、美幸さんの「歓迎会」なんだから、すぐに帰られる筈がない。
そんなことは簡単にわかりそうなものなのに、私はその事実に全く気付いていなかった。
だけど、なせそんなことに…?
この五年間、美幸さんや青木さんには一体どんなことが起きてたんだろう?



私のそんな疑問は、食事の間にほとんど解決された。
美幸さんは、おばあさんの家で一人でずっと暮らされていたようで、仕事もせずにご両親の仕送りで生活されていたということだった。
ご両親はそんな美幸さんのことをとても心配されていて、特に、お父様がご病気をされてからはなおのこと強く心配されるようになったらしい。
美幸さんは、地元でバイトを始めようとしたらしいけど、なかなか長続きせず、そのことがご両親をなおさら不安にさせて、働かないのなら結婚した方が良いとお見合い話を押し付けて来られるようになった。
そこで、美幸さんは青木さんの会社で働くと言ってなんとかご両親を説得し、それで、こちらへ移って来たということだった。

美幸さんはこっちに帰って来ても、やはりシュウさんには会ってなかった。
恐る恐る私は、美幸さんに赤い流星群のことを訊いてみた。
すると、美幸さんは、見ようと思ってたけど寝てしまって見られなかったと答えられた。
シュウさんはあの流れ星の奇蹟で現実の世界に来てしまったわけだから、美幸さんが流れ星を見ていないということはシュウさんはこっちには来ていないということになって、でもでも、シュウさんが確かに門をくぐった筈で……



(一体、どうなってるの!?)



わけがわからず、私は混乱する頭を抱え、俯いた。
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