赤い流れ星3
いつもなら思わず顔がほころんでしまうような色とりどりのお弁当が、今日は色褪せて見えた。
どれを見ても、特にひかれるものはなく…
でも、そんなことじゃだめだって自分を鼓舞しながら、私は滅多に買わない高価な海鮮弁当を手に取った。
スーパーを出て、今度はすぐ傍の洋菓子屋さんに向かい、一人なのに七つのケーキを買った。
買った後で後悔したけど、もう遅い。
自分の馬鹿な行動にますます落ちこみながら、タクシー乗り場を目指して通りを歩いていると、不意に私を呼ぶ声が耳に届いた。



「野々村さん!」

それはあまり馴染みのない声で…
聞き違いだろうかと考えながらあたりを見渡していると、そこに私はおじいさんの顔をみつけた。



「お、大河内さん!」

おじいさんは小走りで私の傍にやって来て、子犬のような人懐っこい笑みを浮かべる。



「違う、違う!
KEN-Gじゃ。」

「あ……そ、そうでしたね。」

そうは言われても、うんと年上でまだ一度しか会ったことがないんだから、KEN-Gだなんて呼びにくい。



「……買い物かい?」

「え……えぇ、まぁ…」

「夕飯はもうすんだのか?」

「い、いえ、まだなんです。」

「そっか…じゃ、わしにつきあってくれんか?
わしもまだ食べてないんじゃ。」

「え……?」



ど、どうしよう…
おじいさんと二人っきりで食事だなんて…
このあたりにはまだ美幸さん達もいらしゃるかもしれないし、もしもばったり出会ったら……
用があるっていったのにこんな所にいたらおかしいことになってしまう。
でも…二人っきりで食事だなんて…これは美幸さんのことを聞き出すまたとないチャンスかもしれない…!



「おお…」(あ…)

大河内さんと言いかけて、そう呼んじゃいけないんだって思い出し、私は慌てて口をつぐむ。



「KEN-Gさ……」

言い直したその呼び名を口にした途端、私ははっと気が付いた。



(KEN-Gと賢者……に、似てるわ!
や、やっぱり、この人……)



「野々村さん、どうかしたのか?」

「え…?あ、あ、いえ…なにも…
KEN-Gさん、厚かましいんですが、どこか静かで落ちつく隠れ家的なお店なんてご存知ありませんか?」

美幸さんは、ファミレスに行きたいと言われてたから、それとは正反対の落ちついた店に来られることはないだろうと私は考えた。
美幸さん達はカラオケにも行かれるわけだから、食事もそんなに長引くことはない筈だし、おじいさんとゆっくり食事をすれば、偶然出会うことはまずないと思われた。
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