Only

何も言わずにあたしを見つめる大地。

「…っ、ほら、レース生地探すの手伝ってよ。早く戻らなきゃ」

苦し紛れにそう言うと

「…うん」

とだけ答えて、大地はレース生地を探し始めた。


…とりあえず、セーフ?

大地って、勘が鋭いんだなあ…

それから、レース生地を見つけて、2人で家庭科室を出る。

教室へ戻る途中、生徒玄関をふと見ると。


…光がいた。

光の隣には、綺麗な顔をした女子生徒の姿。

きっと、他クラスの子。

ひょっとしたら他学年かも。

2人が話をしてると、絵になる。


…ちく、って胸が痛む。

光はもうあたしのものじゃないし、

あたしももう光のものじゃない。

なのに、どうして?


諦め悪いあたしの心は、あの子に妬いてる。

妬いたって、何にもならないのに。

もう二度と、結ばれないのに…


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