さくら町ゆめ通り商店街~小さなケーキ屋さん~
家事を済ませた母が店に出てきた。

店とあたしたちの住まいはつながっている。
店の奥はケーキをつくる厨房。
その奥は住まい。


「実可ちゃん、ありがとう」
母はうれしそうだ。

「だって……」

お金を稼がなきゃ、と続けそうになって、あわてて言葉を飲み込む。

そんなことを言うと、母が悲しむような気がしたからだ。

誰だって、自分の子どもに、できるなら、お金の苦労など掛けたくはないはずだ。

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