理想の都世知歩さんは、




彼が焼いた鯖の骨を上手く除けながら、味付け海苔や梅干しと一緒に食べた。

私、牛乳ってパンとご一緒するものかと思っていたんだけど、それは彼の常識にないらしい。
常識にあったとしても捩じ込んで来ただろう。


「都世知歩さん、モグモグしているとき、何か目が逆三角形みたいになりますね」

「ん?」

「ちょっと怖いんですけど美味しいんですか?」


都世知歩さんは、むーと言って頷いた。あ、美味しかったんだ。

判りづらいな。


…寂しいなぁ。


「…てめぇ俺の料理に何の文句がある」

「はい?ないです」

「だったら何でそんなめそめそした顔で焼き魚を見つめる?朝から辛気臭くてしょうがない」

「すみません。朝弱くて」


都世知歩さんは疑り深気な逆三角形の目で私を見てきた。ぎゃー!バレるバレる!!


「あっあっ都世知歩さん、今日もお仕事ですよね!休日もお仕事あるんですね!忙しそうだなー!」

「…」

「御免なさいもしかして今のは『干渉』に入りましたか」

「いや、それくらいは…いつかバレるだろうし」

「よかった」

「休日の方が忙しい仕事」


休日の方が忙しい仕事?


何だろう。


そういえば仕事に関係すること聞いたこともなかったな。

何の仕事してるんだろう。


「何?」

「わ、いえいえ!何でもありません!」

「箸止まってるけど」

「食べます!」


都世知歩さんの手料理が想像を超えて美味しいから…。

余計に寂しくなるんだ。


お母さんの料理食べたいなぁとか、これがホームシックってやつなのかとか、自分がなるなんて想像もつかなかったのに。


新しい環境がどうとか、そういうことかもしれないな。うん。

何日かしたら直るだろう。


それまでは、帰りたくなっちゃいそうだから家に電話するのもよそう。多分向こうから掛けてこないのも私がこうなることを予想してくれてるんだ。


「アコメ、今日は夕飯も先食べてて」

「らじゃー!私も日中は春からの勤務先に出動します」

「分かった」

「洗い物は私がやるのでお仕事行ってください」

「お。助かる」





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