初恋は雪に包まれて


「……え?伊東、くん……?」


悲しいほどしどろもどろになる。

高校の頃には放送部に所属し、部長を勤めていたはずなのに、言葉が何も出てこない。

……いや、これは関係がないのかもしれない。


「聞いてんのか。」

「き、聞いてるよ。す、好きって……誰が?誰を……?」

「……俺が、お前を。」


気が付けば、空からは細かな雪がちらちらと降り注いでいる。この町に雪が降るなんて、めずらしいことだ。

午後10時過ぎの、居酒屋が並ぶ大通りか少し奥に入ったこの道は静寂に包まれている。明日にはこの雪が積もり、町を白く染めるのだろうか。


「えっと……今日は冷えるね。ゆ、雪まで降ってきちゃった。あ、はは……」

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