初恋は雪に包まれて


驚いているのは小山ちゃんだけじゃない、俺だって同じだ。

誰が想像しただろう、まさかあの伊東がこんなに大声を出して俺たちを追ってくるなんて。





いつもクールで表情を崩さない伊東からは想像も出来ないほど、怒りを顔に表している。おぉ、怖。


前々からまさかとは思っていたけれど、本当だったとは。

少し前までは確信を持てなかったが、今は胸を張って言える。伊東は小山ちゃんに惚れている。




「小山は、」


「小山は、そういう相手じゃない。」




俺をこれでもかの言うくらい睨み付けながらそう言い残すと、伊東は小山ちゃんの腕を掴み、スタスタと歩いて行ってしまった。
















「なんっだ、こりゃ……」

ダサすぎるだろ、俺。

確実にお持ち帰り出来ると思った女の子をさらりと拐われるなんて。それもあんな完璧なやつに。


「……アイツじゃ、勝ち目ねーよ。」



まぁ小山ちゃんをゲッド出来なかったのは悔しい。けど今から全力で奪いにいくなんて、俺の性格じゃない。……そもそも伊東相手じゃない奪えねーか。





「あーあ、次だ!次!」

どっかに可愛い女の子いねーかなぁ、なんて思いながら見上げた空からは、細かな雪が降り注いでいた。


……今夜は冷えるな。

そんなことを考えながら、俺は一人寂しく道を引き返した。




Fin





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