初恋は雪に包まれて


もう一度鏡でチェックしたところで、スマートフォンが震えた。

胸がドキン、となる。


【ついた】


なんともそっけないメッセージだ。

でも逆に彼が絵文字たっぷりの可愛らしいメッセージをくれてもびっくりしちゃうよな、と考え、少しだけ笑みが漏れた。



アパートの前には黒の大きな車が止まっていた。

車に詳しくない私にはなんという名前かはわからないけど、

四角くて背の高いこの車は、ファミリー向けの車としてコマーシャルで宣伝されているのを何度か見たことがある。


助手席の窓を軽くノックすると、伊東くんは運転席から手を伸ばしてそのドアを開けてくれた。


「はよ。」

「おはよう。ふふ、もうお昼だけどね。」

私の言葉に小さく笑った彼は、なにかボタンを弄りながら「寒いか?」と尋ねる。

「ううん、大丈夫。ありがとう。」

「ん、じゃあ行くか。」


彼はそう言って、ゆっくりとアクセルを踏んだ。


< 33 / 134 >

この作品をシェア

pagetop