初恋は雪に包まれて

なんだかとっても温かいお店だ。それはきっと廣田さんがそういう人柄だからで。

最初は正反対に見えた二人が、今はどことなく似た者同士に見える。

二人とも温かくて、類は友を呼ぶってこういうことなんじゃないかな、なんてことを思いながら、またあんず酒が入ったグラスに口をつけた。



外に出ると、ひんやりとした風が体を包む。お酒で少しだけ火照った体に当たる風は気持ちがいい。

先に出てろ、というのでそうしたけれど、お会計がまだだった。そのことに気付き財布を手にしたまま彼を待つと、ほどなくして出てきた。


「伊東くん、お会計いくらだった?」

「ん?いいよ、いらない。」

「えっ、駄目だよ。」


今日運転してくれたお礼にご馳走するつもりだったのだ。なのに先にお会計を彼に任せてしまうなんて。失敗だった。

受け取って、受け取らない、のやりとりを何度か繰り返した後、彼はふとこちらに目を向けると、なんと吹き出した。

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