翼のない天狗
七、刹那と永遠〈本編完結〉

解放

 風は廻り、水は巡り、緑が天を掴む。
 二十年の時が経った。





 鎖が断ち切られる。手首の枷が外された。

 そこだけ時が止まっていた。
 あの日に変わってしまった金色の髪。白天狗として覚醒している証である、曙色の瞳。薄い肌色はきめ細かく、唇はうっすらと紅い。

 ゆっくりと立ち上がり、錫杖を手にする。とん、と突くと、しゃん、と環が鳴った。
 そして、確かめるように足を踏み出す。

 清青は解放されたのだ。


< 127 / 224 >

この作品をシェア

pagetop