翼のない天狗

清影


 幾日か過ぎた。
 京極を足速く進む紫青。無論、目立つことのないようこざっぱりとした服を着ているのだが、後ろ一つに束ねた狐色の髪と涼やかな藤紫の眼を隠すものはなく、人間離れした端麗な容姿も相まって、紫青の前には自然に道が開ける。

 その道を囲む人人は囁き合う。内容は、様々。
「紫青様!」
 道から声。人人は目を丸くし、さらに囁きを重ねる。

 彼が、実原紫青か。
 彼の容姿は何か。
 美しい。
 恐ろしいほどに

「太助」
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