翼のない天狗
「清影様、帝より発せられた令をご存じですか?」
「天狗を捕らえた者には、という」
「はい」
「この風じゃ、何かの祟りと思うて山に入る者はおらぬし、それでも入ろうとする者は樵や山賊が止めようとする。まあ、まっとうな天狗が人間に見つかることは万に一つもないがな」
「屋敷の者が、昨日向かいました。紫青を探しに」
「……なんと」
「山へ入れたのでしょうか」
「どうであろう」
「もしも入っていたのなら、決して紫青、いえ清青に会わせぬよう、お願いできますか」
「芳君……」
「胸が騒ぐのです」