キミのための声

交差する想い









夢を見た。





何もない白い世界で






あたしの前を歩く"あの人"。






あたしは必死で追い掛けて




距離が離れないように




ただ必死で追い掛けてる。





でもあの人の歩く速さは
どんどん速くなっていって




あたしも走るのに、
どうしてか追いつかない。





……なんで?




どうして?






どうしてあなたはそんなに―――……







「―――待って…葵くんっ!」






手を伸ばして、叫ぶ。






瞬間、彼の足が止まった。





ホッとして彼に駆け寄り
腕を掴もうと手を伸ばすと





その手はスッと空を切った。






「……え?」






―――触れられない。





どうして……






「―――なぁ」





何度も何度も
触れようとするあたしに、
低い声が降ってくる。




そっと顔をあげると、
彼は冷たい表情で
あたしを見下ろしていた。





そしてその唇を小さく開いて







「―――俺、アンタのこと
好きだなんて思ってねぇよ」








目の前がスパークして





彼の姿が消えた。






―――やだ




やだ





行かないでよ







「―――葵くんっ!!」






ハッと目が覚める。




見慣れた天井と、すぐ隣の
窓から差し込む朝の光。





「………ゆ…め…?」




頬に、涙が伝っていた。




ゆっくりと体を起こし、
熱を冷ますように額に手をあてる。




「……嫌な夢」




そう言って苦笑し、
ベッドから降りる。




なんて残酷な夢だろう。




まるで




現実を突き付けられたようだ。





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