キミとの距離は1センチ
それにしても……こうやって並んでみると、木下さんって小さいよなあ。

頭のてっぺん、つむじがしっかり見える。

俺も、男としては決して身長は高い方じゃないけど……そんな俺から見ても、彼女はとても小柄だ。

きっと、こういう子のことを、世の男たちは『守ってあげたくなるタイプ』というのだろう。

身近なところで俺とここまで身長差がある女性はなかなかいないから、この光景に一種の感動のようなものすら覚える。


……もしこんなこと思っているのを知られたら、またどっかの誰かさんに全力でからかわれるんだろうけど。



「あっ、できました……! はい、伊瀬さんどうぞ!」



わざわざ完成したコーヒーを取り出し、木下さんが笑顔で手渡してくれる。

ありがとう、と礼を言ってそれを受け取ると、彼女は照れくさそうにはにかんで、再びベンチへと戻った。

なんとなく、俺もその脇に立って、紙コップに口をつける。


……うん。やっぱり、この自販機のコーヒーはうまい。

この会社は飲料メーカーだけあって、社内にあるほとんどの自販機は無料で利用できるんだけど……この自販機だけ有料だってのは、納得できる。

いい豆、使ってんだよなあ。内蔵されてる抽出用の機械も、金かかってるし。
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