キミとの距離は1センチ
一見素っ気ない返事だけど、その眉間には、くっきり1本のシワが刻まれている。

気付かないフリで、わたしはさらに続けた。



「毎年訊いてるでしょ。身長よ、身長」

「………167センチだけど」



憮然としたその答えに、心の中で思わずガッツポーズ。

や、ほんとに心の中でよ? つい「よっしゃ」とか呟いたけど、実際にポーズしたのは心の中でよ?



「ふっふっふ~、今年もわたしの勝ちね!」

「子どもか。……佐久真は?」

「わたし? ひゃくろくじゅーはち!」

「たった1センチ差じゃねーかよ」



呆れたようにそう言う伊瀬の目の前で、ちっちっち、と人差し指を振ってみせた。



「ふふん、その1センチが大きな差なのよ」

「……そーですか」



やっぱり呆れた表情でため息を吐いて、彼がつぶやく。

腰に手をあてて眼光鋭く、こちらを見下ろしてくるけれど。その目が本当に怒っているわけではないことを、わたしはちゃあんとわかっているのだ。
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