キミとの距離は1センチ
……わかってる。佐久真が俺に、何の特別な感情も持っていないくらい。

ただぐずぐず想っていたところで、この先ずっと、佐久真が俺のことをすきになることはないんだって。

……ああくそ、わかってたこと、だけど……ああも正面から『興味ない』って思い知らされると、こたえるな。



「……『なんで』じゃねぇんだよ、鈍感……」



それでもきっと、今の俺は佐久真以外をすきになれない。

どんなに苦しい思いをしても、どんなに、脈がないとわかっていても。



《今年もわたしの勝ちね!》


《……ありがと、伊瀬。やっぱり伊瀬は、頼りになる》



ただ、同期としてそばにいて。同期としての笑顔を、向けられるだけで。

それだけでいいんだと、納得してしまっているから。

多くは望まないと、自分で決めてしまっているから。




《……い、せ……?》




──あの、雨の中。


びしょ濡れで街をひとり歩く佐久真の姿を、見つけてしまう日までは。
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