10%
・100%の恋心


 がやがやと騒がしい大学の学食で、あたしはご飯をのせたトレーを前に、食べかけでぼんやりと窓の外を見ていた。

 大分、寒くなってきたなあ~・・・。明日は就職課にも顔出さなきゃ・・。

 頭に浮かんでくる色々なことを、そのままだらだらと考えていたら、前の席に人影が立った。

「ここ、いい?誰か来る?」

 顔を上げたら、佐藤君が居てビックリした。あたしは慌てて前の席に置いていた自分の鞄をどける。

「誰も来ない。どうぞ」

 丼とお茶の入ったコップを載せたトレーを置いて、彼が前に座った。そしてバツの悪そうな顔をして、ぼそぼそとあたしに言う。

「・・・悪い。実は、名前覚えてないんだ」

 え?と思って、あたしは自分の顔を指す。彼が頷いたから、力が抜けてしまった。

 あまり接点はなかったとは言え、3年も同じサークルにいて名前すら覚えられてなかったんだ、あたし・・・。

 その様子を見てまた、悪いって謝るから、大丈夫だよと苦笑した。

「岡本芽衣です。今更だけど、宜しくね」

 頬をぽりぽりと掻いて、彼は頷いた。

「・・・・岡本さん。俺は―――――」

「知ってるよ、佐藤君でしょ。経済学部、真田ゼミの」

「・・・・何で知ってるの?」

 本気で驚いたようで、顔を上げて目を丸くしていた。

「・・・いや、だからサークル、3年間も一緒だったんだけど?」

「俺、ほとんど出てなかった」


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