好きの気持ち
そんなある日。
他県から引っ越してきた若者が村で話題になっていた。空き地に体育館を設立したのだ。

私とトワは興味が沸いて、よく観に行ったものだ。覗き見を一週間もしていると、若者に気づかれて中に入れられてしまった。

「おいらに何するつもりだ!」

トワが悪者に言うみたいに戦闘ポーズをとってみせた。

「別にどうするつもりもないよ。この村で子供は君たちだけなんだよね?」

「そうだけど…」

初めて聞いた標準語に2人とも黙ってしまう。

すると、黙る2人にラケットを渡してきた。

「なんだ?このデカイしゃもじ。」

トワは振り回して眺める。

「卓球って知ってるかい?」

初めて聞いた言葉。2人は首を傾げる。


「卓球をやってみない?すごく楽しいスポーツなんだ。何かで一番になりたくないかい?この村に留まって、平凡に暮らすのが夢じゃないだろ?」

難しい言葉だったけど、背中を押されているような気持ちになった。トワの目がキラキラしていた。

「やる!!」

トワは拳を握りしめて宣言したあと、隣の私を見た。

「阪奈は?」

「お母さんに聞かんと…」

「じゃあ、明日までに返事を聞かせてくれるかい?」

私は若者の言葉に頷いた。
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