裏ヤン先生に愛されます
✗過去はいつも見えない


奏平の瞳には、嘘だと言っていた。



嘘なんかじゃないんだよ。


「家に帰れば、モノを投げて手をあげて。

夜ご飯は、ほぼご飯のみ。他に食べたいなら、彼の暴力を耐えるの。

そしたらね、その分美味しいもの買ってくれるんだ。

まぁ…その人は、恋人を失ったばかりで辛いあまりに」


あたしは身体のあちらこちらに、未だに残っている。

生々しい傷跡。

センセーが見た時は、背中を見せなかったからよかったけど。


「…本当にあの時、それで死ぬのを避けた。

それで気分を病んでいって、いじめに反抗することも出来なくなった。

そしたら、調子乗ってるって言われた」

あたしが微かに微笑んだけど、上手く笑えない。

「…あいちゃんは、ホンマに馬鹿や」

奏平の瞳には、涙がぼろぼろと零れ落ちていた。

< 141 / 212 >

この作品をシェア

pagetop