1%のキセキ

涙だけは嘘はつけない



<side 黒瀬>


日勤終わりに立ち寄った、本館とは別館にある精神科病棟。
ここへ来るのは、この病院へ転職する前に来た病院見学以来だった。


正直、俺はこの独特な雰囲気が苦手だった。


ここの病院の精神科病棟だからっていう理由ではなく、どこの病院でも同様にある精神科病棟全般の特殊な空気が。


ただ広い部屋に、長テーブルが3つ並ぶ。

そこで10代から70代の老若男女が様々なリクリエーションを行っていた。

うちの病院は急性期しか扱っていないからか、比率として若年層が多い様子。

一日決められた時間をここで過ごすよう決められているのか、特に何もせず1人でぼーっとしている人が多い。


俺と同じ年代の壮年期であろう男性も何もせず1人で過ごしていた。
見るからにやつれた姿でその顔には生気がない。

窓際に座っている若い男の子は、まだ学生のようだ。
虚ろな目でずっと窓の外を眺めている。


そんな中にもちらほら、同年代で集まるグループがあった。

すぐ近くに目に入ったのは、10代から20代前半位の女の子4人グループ。
一見今時の女の子達だが、服の裾から手首の切り傷が見える。

その中にはまだ個室を出たばかりの子もいるのか、その子の両手首には痛々しい拘束跡があった。


何ともいえない雰囲気から目をそらすように、病室へ目を向けるとそこには男か女かも分からない、ガリガリに痩せた子がベッドに張り付けられ鼻に入ったチューブから栄養を流されていた。

両手首、両足首をベッドに縛られ、肩まで抑制具で押さえつけられている。

きっと何度か自分で抜いた経緯があるのだろう、もう抵抗する様子もなくただ受け入れていた。


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