1%のキセキ



「……俺の気が変わらないうちに手離せ」

……正直、未結に手を取られた時限界だった。だから逃げたかったのに。
そんな俺の忠告も無視して頑として腕を離そうとしない。ぎゅっと掴んで、終いには泣きついてくる始末。

あーあ、どうなっても知らねぇよ。
とうとうぷっつん切れた理性の糸。彼女の手を取って、壁際に押しやり強引に唇を奪った。


「……っ!?」

口を塞がれ唸るような声をあげる未結。
胸に手を置いて、弱々しい力で抵抗してくる。

……あぁ、これ以上はやばい。止まらなくなる。あの時みたいに。

あの時の傷ついた彼女の顔を思い出してはっと我に返った。
一瞬、唇を離して目を開けると、そこには涙をポロポロ流す未結の姿が。


「……俺がした時、未結に気持ちがなかったことなんて一度もないよ」

「そ、そうちゃ……」

「分かっただろ、もうこれ以上好きな子は傷つけたくないんだ」

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