私と彼の恋愛理論
「話が違う。」

そう言って、さっきから拗ねているのは俺の可愛い彼女。

一ヶ月前に、やっと口説き落とした。
お試しだなんて言って半ば強引に付き合い始めたけれど。

気づけば、そんな約束最初からなかったかのように、普通に順調につきあっている。

まあ、俺は最初から手放す気なんてなかった訳だけど。

ロングヘアを素早くまとめ上げて、バタバタと身支度を整えている彼女は、まだご立腹のようだ。

「ちょっともう、ホントに直接行かないと間に合わないじゃん。」

「直接行けば?俺休みだから車で送ってくよ。」

「服が昨日と一緒!いかにもって感じでやだ!」

「ぷっ。」

怒りながらも、てきぱきと手を動かしている彼女が可笑しくて、つい笑ってしまった。

「ちょっと、笑い事じゃないんだから。」

「ごめん、ごめん。文句言いながらも、ちゃんと用意してる姿が可愛くて。」

「…可愛くないっ!」

否定しながらも、ちゃんと顔を赤らめる彼女が可愛くて、またしても笑みがこぼれてしまう。

ニヤニヤしていたら、また怒られてしまった。

「だいたい、私がセットしたアラーム、勝手に止めちゃうってどういうことよ!」

昨日の夜、夕食デートを楽しんでから、彼女は自分の家に帰ると言った。

明日も仕事だからと。

でも、俺はわがままを言って自分の家に彼女を連れ帰った。

明日の朝、一度着替えに戻れるように早く起こすから大丈夫だと。

渋々承諾した彼女は、心配だったのか携帯のアラームをセットしてから眠りについた。
(もちろん、その前にいやらしいことを散々した。)


「ごめん、無意識に手が動いて。」

俺は彼女に謝る。

でも、アラームを止めたのは俺だけど、寝ぼけたり無意識だった訳じゃない。

彼女の寝顔をもっと見ていたかったし、彼女の職場にちゃんと彼氏がいるアピールをしたかったから。

彼女の職場にも少ないが男はいる。
おじさんばかりだと言うけれど、年上キラーの彼女のことだから油断はできない。

だから、わざとアラームを止めたんだ。

膨れる彼女に、心の中でそっと謝る。

嘘ついて、ごめん。

俺は、周りからはそう見えないみたいだけど、意外と策略家だ。
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