臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 康平はここ数日間、いつになく早いペースで返し技を習っていた。彼は練習を休みたくないようだ。

 他の三人に遅れをとりたくない気持ちがあったかも知れない。


「お前の心配なんかじゃねぇんだよ! 他の選手に風邪が移るか心配なんだ」

 康平は、まるで遅刻した生徒のように下を向いている。

 梅田は話を続けた。

「お前、選手としてやる気があるんだったらせめて朝晩のウガイ位しとけ! 試合前に風邪を引いたらシャレにならんからな」


 朝から怒られた康平は、咳込みながら教室へ歩いていった。


「康平どうしたの、風邪?」

 教室に入った康平に亜樹が訊いた。


「心配ねぇよ。日曜日までには治すからさ」

「康平の心配はしていないんだけど、私や綾香に移さないでよね! それと風邪予防に朝晩のウガイは大切だよ。もし受験生だったら、試験の直前に風邪を引くとシャレにならないからね」

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